お客さんがいる本番でこそ、
良い演奏をしてカッコいい姿を見せたいと思うのは、
演奏者がなら誰でも抱く望みです。
一方で、いくら練習で良い演奏が出来ていたとしても
本番ではどんなことが起きるか、事前に知ることは出来ないというのも、ご存じのとおりです。
一発勝負の場である以上、そして、お客さんとの一期一会の場である以上
本番はある意味、泣いても笑ってもその場限り。
だからこそ、その一回を後悔の残るものにしたくないから、
真剣に練習し本番に臨むんですよね。
僕も先日、
ベートーヴェンのホルンソナタとブラームスのホルントリオを演奏する機会に恵まれました。
まだまだコロナの影響は色濃く、
一時は演奏会の開始すら危ぶまれましたが、無事に本番を終える事が出来ました。
本番を迎えてみて、
こうした状況の中で、一人のホルン吹きとして演奏出来ることが、いかに僕自身にとっても活力となっていたか。
改めて演奏出来る喜びをかみしめられた機会でした。
僕自身は、緊張に強い訳ではありません。
本番前は人並みに失敗が怖くなるし、
演奏をしたい気持ちと、逃げ出したい気持ちがごちゃ混ぜになったまま本番を迎える事もありました。
それでも演奏する事は僕にとって大切な事であり、
そして悪い緊張に飲まれなくなったのは、
毎回自分の「プラン」を決めて演奏に臨んでいるからです。
今回、僕が決めたプランはこうです。
~~~~~
・きっと思わぬことも起きるだろう、音も外すかもしれない。でも、それでもいいんだ。
・思ったより緊張するかもしれない。それでも大丈夫だ。なぜなら演奏する事を楽しみにしているから。
・「ホルン吹き」として演奏しよう。ただ一人の、音楽を愛し、演奏が好きな人間として。
・自分がやりたい事の中に、お客さんを招待しよう。
・素晴らしい人たちと共演出来る。沢山音楽で会話しよう。
~~~~~
お客さんに良い演奏を届けたい気持ちとか、
素晴らしい共演者の方達と演奏できる楽しさとか、
音を外す事や本番を迎える事への怖さとか、
様々な気持ちがある中で、
僕が一番望んでいる事を自分の言葉でプランにしてみたんですね。
自分の事を「ホルン吹き」として考えているのも、プランの1つです。
プロのホルン奏者として絶対にミスをせず、常に良い音で演奏する事を「プラン」にしたこともありますが、
僕にとってはそのプランは「緊張を悪い方向に向かわせる」ものでした。
プロホルン奏者に拘るでもなく、完璧な演奏者として振る舞うでもなく、
ただ一人の、音楽を愛し、演奏が好きな人間として演奏する。
僕にとっては、どうやらこうしたセルフイメージが一番力を発揮するようです。
プランとは、自分が実行したい理想の演奏像です。
・当日の舞台で、自分はどんな演奏をしているのか?
・どんな事をすると、最高にノッて演奏出来ているだろうか?
・これだけ出来れば、いくらミスしても後悔はしない!と思えるようなことは何だろうか?
自分自身にこうした問いかけをしていき、自分の目指す演奏者像を描き出すんですね。
そうすると、
自分自身が何を望んでいるかが明確になるし、
望みが明確になる事で、
本番の舞台で緊張したとしても「望みを実現する為にどう行動するか」が明確になるんですね。
多くの場合、緊張が悪い方向に向かうのは、
緊張している自分を持て余して、どうするかプランを決めず、
その場その場のミスに過敏に反応し続けた結果、ある意味パニックになっているからです。
自分が「こうなりたい」と強く思えるイメージがあるのであれば、
いくら緊張していても、そのイメージが消える事はありません。
そして「こうしよう」と自分の意志でプランを決めておくことで、
どんな状態にあっても、目指すモノに向けて体は動いて演奏していきます。
本番は一発勝負の場です。
だからこそ一発勝負で上手くいく為には、
自分が最も力を発揮するコンディションに自分を持っていく必要があります。
良いコンディションを作り出す為には、
良いセルフイメージを描いておくことも大事です。
故に、
【自分はどのように演奏したいか?】
問い続け、探し続ける必要があるんです。
建前は全て置いといて、
自分が本心から望むものは何か?
本心からやりたい演奏はどんなものか?
それを指し示すプランを持って、本番に臨む必要があるのです。
僕にとって建前を全て無くしたとすれば、
もっともやりたい事は「楽しんで演奏する事」です。
なぜなら演奏する事は僕にとって本当に楽しいから。
そして、これだけでは「自分が楽しい」だけなので、
聴いてくれるお客さんも楽しんでもらう事を考えた結果、
・自分の楽しさにお客さんを招待する
というプランも持つようになりました。
自分も犠牲にせず、
お客さんも楽しんでもらえる演奏を目指すために。
今回のプランも、まだまだ改良の余地はあるでしょう。
「演奏する」とは、表現していく事であり、
表現をするためには自分の本心に触れ、
「どう在りたいか、どう表現したいのか」を明確にしていく事が肝心です。
僕らは思っているより僕達自身の事を知りません。
自分が真に望むものは何か?自身に問いかけ、答えを見つけていく事で、
どんな場でも自信を持ち、表現していくための「自分のコア」となるものが見つかっていきます。
胸を張れる「コア」を見つけていくためにも、問いかける事を止めないでください。
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