「音の強弱」とは何だろう?

【音の強弱とは何だろう?】

フォルテ(f)やピアノ(p)、普段譜面を見慣れている僕らは、
これが「音の強弱」を指す記号である事はすぐにわかりますよね。

音の強弱・ダイナミクスを示すために、
昔から「f」や「p」、「mf」などの記号が使われてきたのは周知の事ですが、

そもそも、
音の強弱とは何なのでしょう?
それは音量の大小の事なのでしょうか?

 

 

吹奏楽部から音楽を始めた僕にとって、
「f」や「p」というのは、
音の大きさ・小ささの事だと思っていました。

中学の部活の時には、
「f」は金管らしく、よく響く音で、吠えるようなイメージで。
「p」はフルートのように繊細な音で。

なんてイメージをしていたものです。

 

実際、僕が所属していた吹奏楽部では、

fの時は金管らしい、迫力のある音で演奏するよう、
pは静かに、周りの音ののバランスを聴きながら寄り添うように吹くように

そんな風に先輩から教えられてきて、
その通りに吹けば、合奏でもOKが出されていたから、

当時はなんも疑問を抱かず、そのまま鵜呑みにしていました。

 

 

「それは少し違うのではないか?」
と思うようになったのは、

吹奏楽以外にも、
オーケストラや、アンサンブルを演奏するようになった時です。

 

例えばチャイコフスキーは、
交響曲第6番「悲愴」では、冒頭に「pppppp」という指示が出てきますよね。

もしこれを、
中学校の、吹奏楽部の時の僕が初めて見たら、
「聞こえるか聞こえないか分からないような音で」楽器を吹くという指示だと思ったでしょう。

しかし、本当にそういう風に演奏したら、どうなるでしょう?

オーケストラの中で、他の楽器とアンサンブルをするどころではなくなりますよね。

 

 

他にも
楽曲の中には、たまに「fff」・「ffffff」という
ダイナミクスの指示が出てくることがありますが、

これも、部活の感覚で、
「楽器が吠えるように、勢いよく吹く」ようにすると、

吠えるように演奏する事に夢中になり、
周りの音を聴いて、合わせるどころではなくなります。

 

中には、意図的に
「吠えたけるように演奏する」事も求められる楽曲もありましたが、

それは、作曲者の意図通りの事であって、

「fff」や「fffff」という指示が、
普遍的に「吠えるように演奏する」という意味である訳じゃありませんよね。

 

 

自分の「当たり前」を疑う事。
俯瞰的な視点に立って、どうすればより良いものが出来るのかを考えるのは重要な事です。

 

自分の中で、

・「f」や「p」とは?音の強弱とは何なのか?

こうした疑問を持つ事は、
より根本的なるものを求める一歩になります。

根本的なるものを求めていく事が、
演奏が上手くなるためにも、
表現に深みを持たせていくためにも、大切な事なんですね。

 

 

pやfが、
・音量や響きの大きさ・小ささを示す記号
という意味であるとしても、

それが毎回、同じような音量や響きを指すモノではなく、

曲ごとに、場面ごとに、
あるいは周りの演奏者や、指揮者ごとに、

求められるダイナミクスを感じ取り、演奏していけるように。

僕達には、
そうした「ダイナミクスの雰囲気」を察する感性と、
実際にその通りに演奏する技術が大切になるのではないでしょうか?

 

 

部活から、吹奏楽部から音楽を始めた僕にとって、

楽器を大きく響かせるように鳴らす事は、
正直、スカッとした気持ち良さを感じます。

しかし、誰かと演奏する時に、
僕の趣味嗜好を押し出すのは独りよがりだし、

作曲者が深く考え、構成しながら作ってくれた楽曲を演奏するのに、相応しい態度とは言えません。

自分が心地良いものを追いかけるだけではなく、
時に、より根本的なるものを求めていく。

そうした態度も、
常に上手くなっていくためには、
大切なのではと思います。

 

 


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