誰もが、演奏でミスする事は嫌ですし、
失敗せずに演奏したいと思っているでしょう。
だけど緊張すると、
自分の身体が思うように動かなくなったり、コントロールが利かなくなる感じがするから、
そうした状態がミスを誘発させるように感じて、
その感覚に恐れを抱き、緊張するのが嫌だと思っている人も多いのではないでしょうか?
普段、自分自身の身体は自分の思うように動かせるし、
楽器から音を出す事も、
練習していけばある程度自分のイメージ通りに出せるようになってきますが、
いったん緊張してきたように感じ、
身体の感覚がいつもとは違ったようになりだすと、
自分の身体がより繊細に感じたり、鋭敏になっている感じがして、
思うように体が動かせないし、何か演奏もしずらくなってしまう気がする。
「こんないつもと違う状態で演奏したくない。どんな場でも普段通りに、緊張しないようになりたい。」
緊張すると、僕もよくこんな事を思ってきました
だけど最近は考えがちょっと変わってきています。
緊張とは、ミスを誘発させるような状態ではなく、
「音楽に集中し、最大限のパフォーマンスを発揮するための準備」を身体が整えている状態ではないかと思うのです。
まず、緊張していると自分が感じ始めた時、
自分はどんな状態になっているでしょうか?
普段よりも高い集中力を発揮していたり、
周りの音が良く聞こえたり、感覚が鋭敏になっている事はありませんか?
これは、緊張している時、
心拍数が上がり、頭の中がクリアになり、いつもよりも体が活発に、感覚が鋭くなっているから起きる事です。
こうした状態に比べたら、
普段の自分というのは、リミッターがかかっている様なモノです。
まあそれも当然で、
普段から心拍数がとても速かったり、感覚が鋭敏になっていたり、四六時中集中しっぱなしになっていたら、
それはとても疲れてしまうからです。
車のエンジンをかけっぱなしにしていれば、
いずれ焼き切れて壊れてしまうのと同様に、
僕達の身体も僕達が生き続けるために、
穏やかに、リミッターが外れないように活動しているんです。
ただ、
普段の日常とは異なる状況になった時、
リミッターは外れます。
事故や災害が身近で起きた時や、
危険が迫っていると感じたら、
命を守り逃げるために、身体は活発に動きますよね。
普段生きている状況とは異なる状況に直面した時、
人は能力のリミッターを外しているんですね、
本番の舞台でも同様です。
大勢のお客さんという非日常の中にいるから、
そこに適応しようとかrだが準備している状態。それが緊張の正体なんですね。
ただ、緊張している時というのは、
普段の自分とは全く異なる感覚になっているので、
普段通りの感覚で体を動かしたり演奏しようとすると、
思っている感覚と実際の感覚の間に大きな差が出来て、
それで、普段通りには身体を動かせなくなってしまうんです。
軽自動車にF1並の馬力のエンジンを積み込んだら、
ほとんどコントロール出来なくなるのと似ています。
だから緊張している時に必要なのは、
普段通りの自分に戻ろうとするのではなく、
緊張したまま、パフォーマンス能力や気分が高揚した自分のまま、
演奏をやり切るという思考なんです。
緊張したままの自分でパフォーマンスをするというのは、
先程とはまた別の良い点があります。
例えば本番まで30分という時に緊張し始めたとして、
この緊張を、あと30分で無理やり普段の状態に戻そうとするのは
正直無理がありますよね。
だけど、
緊張しつつ、気分も高揚したまま、
「何があってもやりたい演奏をやり切ろう」と決意することは出来ます。
緊張している時は、
頭がクリアになっている分より明確に「こんな風に演奏したい」という自分の望みを想うことが出来るし、
「ミスを恐れず、楽しみながら演奏する」事だって可能です。
ミスを気にした演奏をしていると、
演奏している本人にとってもつまらない演奏になるけど、
ミスを恐れず、演奏する事を楽しんで舞台上で演奏していれば、
それは演奏者本人にとってもエキサイティングな体験になるし、
不思議とそうした乗っている演奏はお客さんにも伝わります。
元の・普段の自分に戻ろうとするのを止めて、
その分のエネルギーを、
「自分の望む演奏」をイメージするのに注ぐ、という事です。
「こんな風に演奏したい」という自分の望みが明確であれば、
緊張によって、血の巡りが良くなり、頭も活性化され、
より明確に望んでいる事を実現している自分のイメージが出来るようになります。
重要なのは、
いかなる場合でも、その時の自分を否定せず、
「ありのまま」を認め、活かそうとする事です。
その為に大切な事は、
「自分を信頼しながら演奏する」という事です。
自分の能力に疑念を抱いたり、疑ったまま演奏するというのは、
パフォーマンスを低下させるし、どんな些細なミスでも気にしてしまう心理状態になります。
「常に自信満々でいるべき」なんて風には言いませんが、
舞台で、本番で演奏している間だけは、
自分が自分をとことん信用するべきだし、
それが、舞台に立った者の責任だとも思います。
謙虚な人や、自分に自信の無い人は、
自分を信頼するのを苦手にしています。
僕自身も、
自分の能力を信頼するより、
自分の出来ない部分や、至らない点を見つけ、そこを反省するのが得意で、
そちらの方がある意味落ち着く感じもあります。
物事をポジティブに見るより、
ネガティブに見ていた方が自然な感じがするんですね。
しかし、それでは上手くいかないんです。
常に自信に満ちた人が、
時として謙虚になり、我が身、我が行動を振り返る事が成長につながるのと同様に、
謙虚な人、自信が無い人は、
「この時だけは自信を持とう」と心に決めて、それを実行することが成長に繋がります。
「中道を往く・バランスを取る」事が大切なんですね。
その為に、
普段自分が行わないような行動や考え方をしてみる事も必要なんですね。
もし、自分に自信が無く、
本番での演奏も少し怖く感じてしまっているのなら、
本番の時の自分は、
普段の自分を超えた能力を発揮できるし、
良いパフォーマンスを実現する事も出来る。
そんな風に自分を信じてみるのはどうでしょうか?
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