管楽器を演奏する人なら、
誰もが1度は耳にする「腹式呼吸」という言葉。
もしかしたら、
管楽器の演奏者さんでなくとも、
1度は聞いたことがあるかもしれません。
管楽器を演奏する人を見れば、
息を使って演奏していることが分かるから、
「呼吸」というのが大事なのはわかるけど、
そもそも、なんで普通の呼吸ではなく、
「腹式呼吸」に管楽器演奏者の人はこだわるのか?
それは、
管楽器を演奏するための「ブレス」を作るには、腹式呼吸が最も適切だからです。
生きるためにに必要な「呼吸」と、
管楽器を演奏するために必要な「ブレス」は、違うものなんですね。
僕達は、生きていくために、必ず「呼吸」をしています。
呼吸によって酸素を取り込み、老廃物の二酸化炭素を放出する。
このように僕達は、生きるために必要な酸素を細胞に与えています。
こうした「生命維持」のための呼吸は、
実は、あまり体を動かさなくても出来ます。
生命維持のための呼吸。
いわゆる「自然呼吸」をしている時に、
自分の身体を観察してみると、
胸の辺りが動いて呼吸しているのが見て取れますよね。
自然呼吸は、
上半身や背中、胸のあたりの筋肉の動きだけで出来てしまうから、
お腹や臀部、下半身あたりの筋肉を、呼吸のために運動させなくても大丈夫なんです。
でも、管楽器を吹くには、自然呼吸では向いていません。
なぜなら、
管楽器で音を響かせるための「息を吐く力」が、自然呼吸では弱いからです。
自然呼吸は、
生命活動のために「酸素」を取り込むことが目的ですが、
管楽器のおける呼吸では、
唇やリードの振動などで発生した音を、楽器内部を通って外の空気にも共振させ、音を「響かせる」必要があります
音を響かせるためには、その分多くの空気が必要です。
しかし自然呼吸では、腹式呼吸に比べ、息を吐く力が弱く、空気量も少ないんです。
だから、力強く息を吐き、音を響かせる空気量を作り出すため、腹式呼吸が必要とされるんですね。
実際、人は、
息を吸う事よりも、息を吐く際に身体を動かすことが得意です。
より多くの息を吸おうと、身体を動かしても、
逆に呼吸が苦しくなってしまいますが、
お腹周りや下半身、股関節や背中の筋肉、
「呼吸筋」と呼ばれる、
みぞおちのあたりの横隔膜を動かすための、付随する筋肉を使って、
よりたっぷりとした息を吐きだしたり、
息をの流れを調整していくことは、出来た実感があると思います。
管楽器を演奏するためには、
腹式呼吸をする事で、息を吐き出す動きを調整しながら、
良い音で響かすための「空気」を吐き出すという事が必要になってくるんですね。
ここまでで不思議に思ったかもしれませんが、
僕は「息をコントロールする」という言葉は使ってません。
息とは空気であり、
自分の身体・筋肉など、
自分の意志でコントロール出来るものとは異なります。
そういう意味で、
「息をコントロールする、」
「体の中の呼吸をコントロールする」というのは、
出来ない事にチャレンジすることになるから、
矛盾が生じてしまい、混乱する原因になってしまいます。
才能ある人ならば、
天性の感覚で、こうした混乱を避け、
適切な奏法で演奏できると思いますが、
僕達のような凡人は、
正しいニュアンスで、自分の身体をコントロールしていかなければ、
正しい奏法から遠ざかり、演奏の不調の原因を作ってしまいます。
だから僕は、
管楽器の演奏の為の「腹式呼吸」とは、
「息を吐く」という身体の運動をコントロールする事を指す、というニュアンスで考えています。
そういう意味では、
腹式呼吸とセットで言われがちな、
「お腹のささえ・息のささえ」という言葉も、そのニュアンスを考える価値があります。
ささえるという言葉には、
「鉄筋で、コンクリート造りの建物をささえる」というような、
「物体を固定し、動かなくする」というニュアンスを感じますよね。
では、
「お腹でささえる」というのは、どういうことでしょうか。
・腹筋の力で、横隔膜が動かないようにすること?
・息を吸って膨らんだ肺が、下に落ちてこないようすること?
・演奏時に上半身を固定するようにすること?
…どれも、
演奏には不向きな動きのように思えますよね。
僕は、管楽器演奏における
「お腹をささえる」という言葉のニュアンスは、
・息を吐き続けるための身体の動きを、コントロールしつづける
という意味を持っていると考えています。
確かに、
「支える」という日本語は、
・何かを持ち上げる
・重いものを落とさないよう保ち続ける
こういったイメージがあります。
だから、「ささえる」という言葉を聞いた時、
・何かを固定して、動かさないようにする、
というニュアンスでとらえるのも、無理はありません。
でも、「ささえる=支える」という言葉には、もう1つ意味があります。
それは「維持する」という意味です。
治安を支える、法を支える、
これらの「支える」は確かに「維持する」というニュアンスでしっくりきますよね。
管楽器の演奏においても、
「お腹の支え・息の支え」という言葉を、
「動きを固定するために支える」というニュアンスで考えるのではなく
・音を響かせるために大切な息を吐きだす「身体の動き」をし続ける(動きを維持する)
という風に考えてみたら、意味がスッキリしてきます。
良い音を、良い響きで
聴いている人達に伝えていくために
自分自身の身体が、
自由に、好きな様に動けながら、
息を吐きだす「身体の動き」をし続ける。
もし
「もっと息を支えて」と合奏で言われたなら、
こんなニュアンスで考え、演奏してみると、音が変わると思います。
呼吸の事は、
いくら研究しても飽き足りないほど、
とても深く学べる分野だと思います。
まだまだ、まとめたい内容もあるので、
またコンテンツがまとまったら、こうして書いていきますね。
コメントを残す